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ねんまつなあやれいむ

田北さんが聖誕祭だというので突発。
ジェネでもいいかと思いましたが、あまりにもざっくりなのでこちらで。






 年の瀬ともなれば、師はもちろん弟子も子も親も走り回る。
 我が家の掃除、迎える年の準備、飾りエトセトラエトセトラ。
 例えば、永遠亭では増える宴会で発生する患者に対応すべく薬の準備に余念がない。
 例えば、守矢神社では参拝客のために御神籤を用意したり御守りに徳を込めたり。
 兎にも角にも、幻想郷は上に下にの大忙しなのだ。
 一部の例外を除いて。
 
 
「で、こんな時期にのんびりしていていいのですか?」
「こんなところで油を売る烏に言われたくないわよ」
「これも取材の一環でありましてー、室内に引きこもるどこぞの天狗とは一緒にしてほしくないですー」
「誰よ」
「えっ」
「会ったこともないわ」

 騒がしくなってきた幻想郷の中、境界に位置する博麗神社は静寂そのものである。
 参拝客もなく、賽銭もなく、神社の鈴も文が一度鳴らしたきり。
 閑古鳥が鳴き放題。
 
「実際、山の神社も見てきましたけど忙しいみたいでしたよ?」
「そりゃあ、天狗と宴会するんだもの。酒の確保とか大変でしょう」
「いや、それもですけど御神籤とか」
「できてるもの」

 普段は開放されていないために中は見えないが、本殿にはすでに御籤や御守り、破魔矢などが準備されていた。
 二次会がてら来るであろう、妖怪の参拝を見据えて酒は用意してあった。
 珍しく、里からの寄付である。
 ちなみに、人間が来るには些か危なかったので寺子屋の慧音さんが持ってきた。
 
「……大掃除とかは?」
「いつも掃除はしてるし、大掛かりにする必要もないわ」
「……」
「何よ」
「異変です! 異変が起きています!」
「しばくぞ」

 コタツから外に飛び出そうとする文を、霊夢は背後に回りこんで捕まえた。
 知ってのとおり、文を含めた烏天狗は幻想郷最速を名乗るにふさわしい素早さがある。
 その文を、先回りしたのだ。
 さとりのような読心の力もなく、一般人の速度しか持たない霊夢がどうやって回り込んだのか。
 
「私には、それを理解することができなかった……!」
「誰と会話してんのよ」
「いや、まぁその」
「ま、いいわ」

 霊夢は文を解放し、コタツに戻った。
 寒かったらしい。
 
「あーぬくい」
「それはともかく、本当にどういう風の吹き回しですか? 手際が良すぎる気がするんですけど」
「いつもこんなんよ? 異変が起きない限りは基本暇だし、里に下りて買い物するくらいしかしないわね」
「ご趣味は」
「茶をしばく」
「……なんかこう、霊夢さんは波がありませんよね」
「あんたがぶれ過ぎなのよ。平穏が一番」
「船の時に財宝狙って襲撃した人間がなにを」
「何か言った?」
「いいえーなにもー」

 冬にしては穏やかな日、巫女と天狗の他には誰も居ない。
 鬼は天に遊び、魔法使いは悪魔の館。
 風祝は、年末年始で大忙し。
 里もまた、師走にふさわしい慌しさ。
 もしかしたら、ここは幻想郷で今一番平和なのかもしれない。
 
「……まぁ、今はいいですけど年が明けても暇だったらどうしますか?」
「お茶飲んで里に餅食べに行くわ」
「作った御守りとかは?」
「里に卸すわよ。一応、由緒ある神社だから御贔屓にはされてるの」
「……餓えてすごすわけじゃないんですね」
「しばく」
「ぎゃあ、冗談ですよ」

 御幣で叩かれただけなのに、文の頭には漫画のようなコブができた。
 よほどの力で叩かれたか、妖怪によく効く武器なのか。
 仔細は不明。
 文も今日は取材をする気が無いようで、お茶と蜜柑を食みながら霊夢にちょっかいを出しては叩かれている。
 霊夢もよほど暇なのか、文を追い出す気はないようだ。
 
「ねえ。霊夢さん」

 何度か小突かれたあと、コタツに突っ伏しながら文は言う。
 
「私は、一人だってここの宴会に来ますからね。準備しておいてくださいよ?」
「二人でやって、宴会って言えるのかしらね」
「コタツでできますよ。鍋をつつくこともできます」
「ああ、それは魅力的ね」
「でしょう? お酒もお願いしますよ? たっぷり飲みますから」
「持参しなさい」
「えー」

 間もなく新たな年を迎える幻想郷。
 来年は、一体どんなことが彼女たちを待っているのだろうか。
 
「あ、来年も取材はお断りだからね?」
「そんなひどい!」
「また大酒かっくらう写真載せられてたまるかって話よ」
「いいじゃないですかー、酒は飲んでなんぼですよ?」
「だからよ。今年の頭だって、うちの樽一個開けたくせに」
「あれは鬼っ子のせいじゃないですかぁ!」
「あ、やっぱり陰じゃそんな風に思ってたのね。あとで教えておくわ」
「えっやめてくださいよ。死んじゃうじゃないですか」
「しんでしまえ」
「ひどいひどい!」

 霊夢は淡々と文をかわし、文はそれにもめげず追撃を試みる。
 文の言葉が、霊夢に届く日はまだ遠い。
 静かな境内に、言い合う声がわずかに響く。
 博麗神社は、今年も平和であった。

2010.12.26 | | Comments(0) | Trackback(0) | SS

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