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かえりみち

2008年例大祭で頒布された文樹絵花に寄稿させていただいた「かえりみち」になります。
雛と出会った妖怪の子の運命や如何に。





・-・・ -・--- --・ ・・-・- ・・-・

 ここはどこだろう
 かえりかたがわからない
 おかあさん、どこ?
 おかあさん

 春を通り過ぎ、もはや夏の始まりに差し掛かった。桜の花も青々とした葉となり、人も妖怪も活発に活動する季節。農業を主として生活する人々には、この時期が最も忙しい時期のひとつと言える。
 崖の上からも、人々が慌しく動いているのが見てとれた。今日は生憎の曇天ではあるが、十分に暖かい。眼下の世界は生で満ち溢れている。
 「和やかでいいことだこと」
 私自身は、そういった営みから切り離された存在だから興味はない。というよりも、ここにいること自体が珍しいのだ。
 「厄神殿、首尾はどうですか?」
 「まぁ、上々ってところかな」
 振り返ると、慧音という獣人が茶を用意して立っていた。その半分は、妖怪よりも私たちに近い感じがする。
 「さすがにこの季節には厄が少ないわ」
 「そうなのですか?」
 「笑う門には福来るって言うでしょ」
 人間の間で語られる諺。アレは字面どおり、明るい者には幸運が寄ってくると取っても間違いではない。厄が寄りにくい人間、寄りやすい人間がいる。それは性質にも関係することだけど、感情にも大きく影響される。当然ながら、上辺だけの感情では厄を跳ね除けることなどできない。それは巡り廻って訪れるものだから。
 「ところで、なんでそんなところに?」
 ただでさえ人里から離れた崖にある上白沢慧音の家。私は、その家の外にある丁度いい大きさの岩に腰掛けている。始めのうちは中に誘われていたのだが、固辞してみたわけである。もちろん、悪戯ではない。
 「あなたは半分人間でしょう?」
 「そうですが」
 「あなたの家にはあなたの匂いと、他に訪れた人間の匂いもついているわけよね?」
 「……ですね」
 今の間はなんだろう。
 逢引とかしてるのか。
 「私がためこんでいる厄は人間のものだから、そういったものにつきやすいものなの」
 慧音が黙る。付喪神が生まれることはないだろうけど、人間に厄が戻ることに違いはない。そんなわけで、人間の集落や生活範囲にはなるべく近寄らないことにしている。
 まして、
 「あなたはよく悩んでいるようだし、厄もつきやすいみたいね」
 慧音は苦い顔をしているが、この子の場合は自分の厄に加えて人間のものまで背負おうとしているから、厄がたまりやすいのだろう。先ほどからこっそりと厄を(人間の分だけ)集めてみたが、普通の人間よりも厄が多かった。半獣だからなのか、本当に厄を吸い寄せたのかは判断がつかない。
 「でも、私自身不幸だと思ったことは」
 「自覚無自覚は関係ないわ。それに、偶然で発生するものだけが厄じゃない。それには何者かが意識してやったことも含まれるのよ」
 微小な厄であれば、石につまずく程度のことなのだ。それに、罵りのようなものであっても、自ら呼び込まない限りは災いと似たようなもの。その罵りも、何らかの因果によってもたらされるのだから。
 「あ、別に責めているわけじゃないのよ?人間と付き合うのをやめることもないわ。ただ、気負いすぎはよくないと言いたかったんだけど」
 「……ええ、わかっています」
 慧音は賢しい子だから、本当の意味でわかっているのだろう。その上で、人間たちの幸福を願っていることも感じ取れる。だが、他人の運命までは背負えない。
 「わかっているだろうから、今日も私を呼んだんだろうけどね」
 そう、何故こんな人里近くにいるのかといえば慧音に呼ばれたからだ。豊作祈願の厄払いという名目だったけど、私が人里の中を歩くわけにもいかない。厄払いどころか厄まみれだ。下手をすれば、歴史に残る災厄が発生してしまう。そんなわけで、離れた崖の上から出張厄回収を行っている。正直言って効率は悪い。
 「あ、今更だけど」
 「なんでしょう?」
 「厄を払うって言っても全部払うわけじゃないからね」
 「え?」
 「禍福は糾える縄の如し。厄を完全に払ってしまうと、一時的に災厄から逃れられるけど、いつかでっかい揺り返しが来る」
 「それを未然に防ぐため、ですか?」
 「そゆこと」
 まぁ、もともと厄が多い人間が少なかったからほとんど回収できていないのだけど。
 当然のことながら、運命を捻じ曲げることはしない。元々そんな大それた能力があるわけでもないが、過剰な介入だけはしない。神も、人間の守護者ではなく一個の存在であるからだ。私が厄をためこむのも、自分の存在を維持するためだ。この獣人が人間を先導する立場であろうとも、満月のときに幻想郷の全てを知る力を持とうとも、私の役割を取られては困る。
 それは私が私でなくなってしまうから。
 「そういえば厄神殿は、神社とか神殿といったところに宿っているのではないのですか?」
 「信仰ってこと?」
 「そうなりますね」
 「んー。私は普通の神とは違うから、信仰は別に無くても行動できるけどね」
 秘神流し雛。
 その名称の通り、本来であれば知られることがない神。知られざる神に信仰が生まれるはずもない。なら、何を力の源としているのか。
 「私は流し雛軍団の長。厄を管理する役割をこなすことで力を得るの」
 と言うより、その役割しかこなせないと言ったほうが正しいか。秋の神や妖怪の山の神社といった自立?している神とは違う。秋の神は社こそないものの、豊穣祈願などで信仰を得、山の神は言わずもがな。私は神の中でも特殊なモノだから、慧音が知らないのも無理はない。
 「人間は神がすごい力を持ってるとか考えてるかもしれないけど、やることがこれしかないのよ」
 「……はぁ」
 「さて、そろそろお暇しようかしらね」
 「え、もう帰られるのですか?」
 もう少し美味しいお茶を堪能していきたいところだが、これ以上留まっているのは何かと限界だ。
 「厄も回収したし、私が座ってるこの岩も不吉スポットになっちゃうしね」
 「ですか」
 「ですです」
 湯呑みを慧音に返し(厄回収済み)、厄を巻き込むようにくるくる回りながら、私は人里を後にした。

-・・-・ --・ ・・-- ・-・ ・-・・ 
 
 だれもいない
 たくさんはしったけど、だれもいない
 ないても、ないても
 だれもこたえてくれない
 どうしよう
 
 噴き出していた。
 別に、面白いことがあったわけではない。人里にいた間、飛び散らないように目一杯抑えていた厄を普段程度まで戻しただけ。視界が厄で覆われて、陽炎のように視界が歪む。
 正直な話、いつ厄が漏れ出していてもおかしくなかった。慧音の厄が多かったことを差し引いても、やはりもう人里に寄れるような厄の量ではない。私が厄を止めておいても、何らかの影響が、人間に起きてしまう。そうなれば、厄神の立場がない。よほどのことがない限り、人里には寄りつかないほうがいいだろう。……土産か礼としてもらった、桃と米は少し嬉しかったけど。
 鬱蒼と茂る、私の通り道に辿り着いて間もなく、雨粒が顔に当たった。雲は色をどんどん濃くしていき、もはや夕闇のそれに近い。きっと土砂降りになるだろう。
 私は厄をためこむための回転を止め、スピードを上げるために普通に飛ぶことにする。もちろん厄が剥がれていかないように留意する。もともとこの道には、妖怪も人間もその他様々な何かも滅多に寄り付かない。私と流し雛しか、この森には住んでいない。余計なものに厄がうつる心配もなく、厄が自分から離れないように気をかけるだけでいい。
 人の手が入っていない森は、木が好き放題に生長しているために見通しがとても悪い。ちょっとでも気を抜けば、何回頭をぶつけるのかわからない。帰る途中で、何体かの流し雛とすれ違う。会釈もそこそこに、木枯らしのように飛んでいった。
 私の寝床と流し雛たちの集落は、少しばかり離れている。一応集会場のようなところもあるが、こんな森では滅多に使うこともない。私は流し雛軍団の長ではあるけど、基本的に放任なのだ。衣食住は流し雛同士でやりくりしているようだし、私自身にしたってそれとほとんど変わらない。一応人形に近い形をしているから、不自由はないだろう。
 「寂しいっちゃ寂しい話だけどねぇ」
 気にするだけ無駄な話でもある。少なくとも存在を忘れられていないだけ、マシなのだろう。と、考えるのは少々人間臭いのかな?
 今日だけ、人間の近くに寄ったからだろう。自分の役割を忘れたわけではないが、意識がどうしても緩む。今日で一番厄を吸い取ったのは慧音のはず。だとしたら、寂しいなんて思ったのも慧音の厄のせいかもしれない。他人のせいにするのも良くないけど。
 そんなことを考えていたら、速度が結構落ちていた。後ろから豪雨が翔けてくる。早く、家に帰らないと。
 
 我が家は、通り道から少し離れたところにある古い神社だ。鳥居や境内は完全に荒れ果てている。社殿もそれなりに大きくはあるのだが、数多の蔓に巻かれて新緑に侵されている。元は力ある神が治めていた土地なのかもしれないが、今は見る影もない。近くに住居跡も無いから、私と同じ秘神だったのかも。ま、いない神に信仰もあったものではないだろう。そんなわけで、今は私の雨風を凌ぐ社として拝借している。それも、いつからだったかわからないほどに昔から。流し雛の住居……と言っていいのかわからないが、彼女たちは社殿の軒下にいたり、自然に樹にできた空洞や洞窟なんかに居ついているようだ。割といる場所が一定していない。名前を付けたりもしていないし、探すこともほとんどないから困ることもないけど。
 雨が盛大に降り始めるのと、私が屋根の下に逃げ込むのは、ほぼ同時だったと思う。葉が密集して、雨が通りづらいこの森の最奥であっても、その勢いのままに地面に雨粒が叩きつけられる。こんな天気なら、息つく間もなく濡鼠になったことだろう。日ごろの行いがよかった。うん。
 社殿の中は薄暗い。光源がないから当然の話だけど。私は行燈の中の蝋燭に火を灯し、慧音からもらった食べ物を置く。
 「……ちょっと寒いかな」
 夏の始まりを感じる季節であっても、雨が降ればまだまだ肌寒い。羽織るものでも探そうか。そう思って、箪笥(元から置いてあった)を開く。いつもは半袖でいるけど、長袖に着替えることにした。羽織るものがなかったわけじゃないよ。ほんとだよ。
 「暇ね」
 やることがない。座布団を枕の代わりにして、寝転んでみる。行燈からの光を受けた長い影が、ちょっと不気味。こんな朽ちかけた神社に住んでおいて、不気味も何もあったものではない。
 
 ひっく……うぇ……
 だからこんな泣き声が聞こえてきても、別におかしくは……
 「え?」
 跳ね起きた。何故、泣き声が聞こえるのか。空耳かと思ったが、空耳はこんなに長く、何度も聞こえるものではない。何よりこの場所には、人も妖怪も寄り付かない。そして、流し雛は喋らない。なら地縛霊でもいるのだろうか? 誰も通らない道に、地縛霊?
 声は外から聞こえて、その発信源はすごく近い。私は社殿の戸を開く。外は勢いが落ち着いた雨が、すっかり宵闇に包まれた森に降り注いでいる。目線を周囲に巡らせるが、泣き声の主らしき姿は見当たらない。本当に霊の類なのだろうか。
 さらに耳を澄ます。と、軒下で物音がする。流し雛が雨宿りしているはずだけど、その音を泣き声と聞き間違えたのか。一応、覗き込んで確認をする。私と同じように、流し雛は厄を溜め込んでいる。厄神である私には、火を見るよりも簡単に識別できる。
 身を寄せ合う流し雛たちとは、違う者があった。
 ごく微量の厄。濡れて泥に塗れた服と翼。軒下で窮屈そうに膝を抱え、泣いている子どもがいた。もちろん、人間ではないだろう。夜は妖怪の時間なのに、ベソをかくとは珍しい。大方、この森で迷って雨宿りの最中だろう。
 流し雛たちが、私に気付く。
 ……そんな困った目で見ないでほしい。そりゃあ、ベソかいた子どもが苦手なのは私も一緒だけども。やっぱり、声かけるべきなのだろうなぁ。
 「もし」
 鐘をついたかのような、鈍い音が響く。驚いた妖怪の子が、頭をぶつけたのだ。もちろん、驚かせるつもりは全く無かった。その子は私に気付き、頬の筋肉に新たな可能性を感じさせるほど表情を引きつらせる。驚かせたのは悪いけど、そこまで怯えられると、その……神様だって傷つくのですよ?
 「大丈夫よ、私は神様だから」
 返事はなく、代わりに怯えと敵意が混ざった視線がかえってきた。当然か。直下型の何かのように、ガタガタと震えている。人間の子どもでも、知らない人にはついていってはいけないと躾けられている。妖怪はどうなんだろう?
 なるべく、他の存在と関わらないほうがいいとついさっき意識を改めたばかりなのに。まぁ後々、床下でアレな状態で発見されても、迷った子どもを真っ暗な樹海に放り出すのも後味が悪い。と、自分に言い訳をする。
 「とりあえず体だけでも拭きましょう?そのままじゃ風邪をひいてしまうわ」
 私は縁側から覗きこむのをやめて、床下へ侵入。服が汚れるが、気にしない。猫か何かをあやすように、右手だけを前に出す。社殿の下は、結構雑多な感じ。土だけではなく、昔使われていただろう農具や廃材もある。しゃがむことも辛い場所だから、ここから先は流し雛に行かせることにした。距離からしても、ここが限界。
 途中で何度か頭をぶつけた。痛い。
 妖怪の子は動くだけの体力も無いのか、はたまた蛇に睨まれた両生類的な状態なのか。何はともあれ、流し雛に引き摺られる形で軒下から救出された。服に泥がついたけど、それは仕方がないことだ。
 この子は体が冷え切っている。とりあえず、ひん剥いて茹でてやることにする。ジタバタと腕の中で暴れているが、湯に入れればおとなしくなるだろう。
 へっへっへ。
 
 つまりはお風呂ということ。
 こればかりは、流し雛に任せることはできない。人の形には近くとも、素材が布やら紙だから水仕事はさせられない。そんなわけで、私が妖怪の子を風呂に入れてあげることになる。必要以上に接近することになるけど、これは不可抗力だろう。鳥の妖怪だからなのか、体を洗っている最中は暴れに暴れられた。翼を避けはしていたけど、水に相当弱いらしい。風呂場の壁とか、私とかに泡が飛び散りまくってまるで泡風呂の様相。新たに石鹸を使う必要がなくなって、よかったかもしれない。綺麗な灰色の翼がまだ汚れたままなのが惜しい。
 その後、ゆっくりと湯船に浸かって疲れを取ろうと思ったけど、彼女はさっさと浴室から出て行ってしまった。カラスの行水ってわけではないだろうけど、あがるのがもの凄く早い。決して、湯船が狭いとかではないと思う。私が足を伸ばしても、全然余裕で入れる檜風呂なのだから。
 
 ビダァン!
 
 脱衣場から盛大な音がする。どうやら転んだらしい。あの音からすると、受身もとれずに顔面からいったかもしれない。押し殺した泣き声が聞こえてくる。
 「だいじょうぶー?」
 尋ねてみたが、返答はない。程なくして脱衣場の戸が開く音がした。社殿の中で雑用をしていた流し雛が、入ってきたのだろう。ま、あんなに大きな音がしたら誰でも来るよね。寝巻きを着付ける音がやや続いて、軽い足音が脱衣場から離れていった。
 静かになった浴場に、湯船で波打つ水の音が響く。なんとなく、体を思いっきり伸ばしてみる。肩やら腰やらが、パキポキと鳴る。今日は何かと疲れた。
 私が本当に助けに行くべきだったのはわかっている。でも、私が行ったら溜め込んだ厄が移るかもしれない。流し雛であれば、厄がほとんど溜まっていない個体もあるし、影響も少ないだろう。
 「……でも、体洗ってあげたのは私だから意味がないわね」
 気付くのが遅いぞ、私。慣れないことばかりしているからだろうか?それとも……のぼせ……?
 
 のぼせた。
 そんなにゆっくり入っていたつもりは無いけど、頭がくらくらして体がだるい。流し雛に扇いでもらって、涼を取る。今の季節は湯冷めもしやすいから、浴衣の中にもしっかりと着ている。代わりに裾を大きく開けているけど。
 妖怪の子はといえば、だれている私の横で慧音からもらった桃を食べている。何の鳥の妖怪なのかはわからないけど、猛禽の類ではないようだ。雑食かもしれないけど、その辺は気にするだけ無駄だろう。私が啄ばまれないだけで十分。助けて食われるとか、どこの昔語りだかわかりゃしない。
 そんなこんなで、私はボーっとしていた。食事をせずとも死ぬことはないし、食べるとしても食は細い。あの子には、桃のほかに台所にあった木の実を少し分けて食べさせた。その様子を離れたところから眺めながら、私は雨が木の葉と土を打ち続ける音を楽しんでいる。子どもはかわいいとよく聞くけれど、それはいろいろな負担を負わない外側からの意見だろう。食事を終えた子に、顔を引っ張られている流し雛なんかは今一番しんどいはずだ。私は、もう一体の流し雛を呼び寄せて耳打ちをする。忠実な流し雛は、すぐさま社殿から出て行った。いい子だ。もちろん、髪を引っ張られている流し雛も。
 「ね、あなたのお名前はなんていうのかしら?」
 名前を聞くのを忘れていた。ずっと「妖怪の子」では呼ぶときにも困るし、なんか物扱いをしているようで気分が悪い。彼女は一度こちらを丸い眼で見つめたあと、首を傾げた。
 「なまえ……?」
 「お母さんになんて呼ばれていたか覚えている?」
 「……わかんない」
 名前がまだないのか、それとも忘れているだけなのか。それでは呼びようもない。
 「私が名前考えるわけにもいかないしね……」
 勝手に定着でもしたら、母鳥に何をされるかわからない。仕方ないけど、呼ぶときは適当に考えることにしよう。流し雛は念でも話せるし、この子には声をかければ応えてくれるはずだ。
 そして、相手をしていた流し雛が服を剥かれ始めた頃、外から社殿の戸が叩かれる。心配そうにこっちを見る妖怪の子に目配りをして、戸を開ける。予想通り、先ほど言いつけをした流し雛が他の流し雛を連れて戻ってきた。
 さっきの頼みとは、「流し雛を十人、できれば今の時点で厄を持っていない者を集める」というもの。これから妖怪の子と一夜過ごすにあたって、できればやっておきたいことだ。
 「多分数日間、あの子を家に置くことになるわ。その間の世話役を、あなたたちにお願いしたいの」
 流し雛の厄を溜めておける量は少ない。もちろん個体差はあるけど、総員で私の半分から六割といったところだろう。そして、流し雛本来の役割は「身代わりに厄を受け持つ」ことだ。私の配下になっても、本質的なところは変わらない。厄をある程度溜め込むと、自ら動くことが難しくなる。流し雛の名のとおり、川の流れに身を任せる。
 私の身の回りの世話を焼いてくれる流し雛も、ほとんど厄を溜め込んでいない。厄を溜めこんだ流し雛は、私が厄を吸い取らないとまともに動くことができない。今回厄を保持していない流し雛を呼び寄せたのはこのためだ。
 私の近くにいればどんな人間、妖怪であっても不幸になる。それならば、せめて軽い不幸にしてあげたいという……親切心? 老婆心? のようなものだ。
 緩慢な動きで、社殿の中へ入っていく流し雛。気が進まないのだろう。命令は聞いてくれるものの、ある程度の自我があるようだから始末が悪い。
 「さて、あの子は何をしているかな?」
 相手をしている流し雛は、いったいどこまでやられてしまっただろうか。せめてお嫁にいける程度でやめておいてもらいたい。いや、どこに嫁に行くかとかは知らないけど。


 彼女は、流し雛を抱いたまま眠っていた。とても安らかな寝顔ではあるが、抱かれているものが問題だ。衣装は肩まではだけており、両手で顔を覆って震えている。
 「……お疲れ」
 それしか言えなかった。
 子どもの服や髪も多少乱れているところを見ると、必死に抵抗もしたようだ。怪我はしていないようだから、心配は要らないだろう。 
 私は布団をしき、妖怪の子を運ぶ。そして、余計な厄がつかないようにそこを離れる。厄がつくことに時間は関係ない。寝違えたり、置いてある壺とかに頭を打つかもしれない。不幸は待ってくれないのだ。
 こんなことにまで気を使うのに、なんでこの子を迎え入れてしまったのだろうか。部屋を一つ取られ、流し雛を余計に動員。さらには、また迷わないように親元まで連れて行かないといけないかもしれない。正直な話、面倒すぎる。明日は、今日以上に忙しいだろう。
 ……私にも眠気が襲ってきた。瞼が重い。浴衣の上に上着を羽織って眠ることにする。布団を貸したから、畳がとても固く感じる。
 灯りを消せば、夜の闇が部屋を包む。わずかな風が木の葉を揺らし、その音が心に波を立てる。悪い予感は当たる。できれば、寝ている間にこの予感が消えるように祈り、部屋を分ける戸を閉めて私は今日を閉じる。
 
 
 赤だった。
 辺り一面、赤に染められた。
 それは、自然にある中で最も純粋なもの。
 命あるものに流れる、命の証である液体。
 不幸な事故だったと、見知らぬ男が言った。
 泣き崩れた若い女は、血の持ち主と親しい者だろうか。
 幸運にも、迷ったら二度と抜けられないと言われた森から生還した男は、その日のうちに不幸にも落石に巻き込まれて死んだ。
 不幸にも
 ふこうにも
 私は、どこでそれを見ていたのだったか。
 私は、何をした。
 何をしなかった。
 男の体には、うっすらと紫色の
 

-・・-- -・・・- ・・-・- 
 

 窒息したと思った。浴衣は寝汗でぐっしょりと濡れていて、感触が悪い。夢というには、あまりにも生々しい。見るというより、直接頭の芯に叩きつけられるような、そんな夢だった。
 頭だけではなく、ついでに体も重い。まぁ、これだけ寝汗をかいていれば体調も乱れているだろう。体を起こしてみれば、体が重い理由がそこにあった。お荷物が乗っている。部屋を分け、見張りと犠牲の流し雛を付け、二重三重の予防策も張っていた。
 流し雛が命令以上のことを行うのは難しい。彼女に気に入られた流し雛なら、起きた後も引きとめられると思ったけど、それも無駄だったらしい。て言うか、よく押入れの中なんてわかったな。
 すぐに流し雛を数体呼び寄せ、彼女を引き剥がす。もちろん、起きないように配慮しながら厄も抜く。私に長く接しているということは、私が溜め込んだ厄全てに身を投じることと同義。私以外では、自殺行為以外の何物でもない。彼女が起きたら、一度言っておかなくては。
 どうやら、昨日から降り続いていた雨は止んだようだ。早朝特有の、露の匂いがする。これなら、里まで降りても大丈夫だろう。私は彼女を押入れに置き去りにして、服を着替える……前に水で体を拭いた。さすがに汗だくのままで服を着るほど、色々と諦めてはいない。水瓶から柄杓一杯分の水を布に染みこませ、汗をくまなく拭き取る。まだ朝の空気は冷たさをはらんでいるが、葉の隙間から注ぐ陽射しのおかげであまり気にならない。人目を気にすることもないし、朝のハプニングは帳消しになるくらいには気分転換できた。
 私が服を着替え、朝食の準備を終えたころには妖怪の子も起きてきた。本日の朝食はナメコの味噌汁にホウレン草のおひたし、あとは稗を混ぜたご飯である。鳥の妖怪が何を好むのかは、相変わらず不明。まぁ、普通に食べているところを見れば、問題はないのだろう。
 「ところで」
 彼女がご飯を食べ終えたところを見計らって(口の周りにはお弁当がたくさん残っている)、話を切り出した。「?」とか小首を傾げるな可愛らしい。
 「今日はあなたのお母さんを探すわけだけど、絶対に私には近寄らないこと」
 「?」
 「私に近付いたら、悪いことが起きるからね」
 最悪、二度と母親に出会うことはできない。母親に会えたとしても、その時に五体満足であるかは保証できない。
 「一緒に流し雛も連れて行くから、そっちと手を繋いでね」
 返事はないが、かわりに首を縦に振った。ちゃんと理解できているかは謎だが、流し雛の監視もつけていれば大丈夫だろう。多分。
 出発は、妖怪の子の服を洗濯して乾かしてからだ。さすがに寝巻きのまま連れ回すのは、教育上も傍目にも悪すぎる。今日は天気がいいからすぐに乾くだろう。それまで、食器の片付けとか掃除とかすることにしよう。彼女の相手は、引き続きあの流し雛に任せることにする。
 ……そんな死にそうな眼を向けるな、弔いはちゃんとしてやる。
 日常とは違う朝はこうして過ぎた。数々の障害を乗り越えて一日が始まる。
 
 
・-- -・・- ・・-- ・-・・ ・・-・- 

 
 始まったのだが、のっけから困難だった。
 聞き込みの候補地は「博麗神社の巫女」「妖怪の山の天狗」「人間の里の慧音」で、近いところから回ったほうがいいだろうと考えたわけだ。そうすると
 ①妖怪の山
 ②人間の里
 ③博麗神社
 と、なる。
 妖怪の山は麓か滝付近までいけば、天狗の哨戒がいるはず。そこから鴉天狗なり何なりに取り次いでもらえばいい。妖怪の山は、たいして距離が離れてはいなかった。
 確かに離れてはいなかったのだ。しかし、私の感覚は「空を飛んでいった場合」の距離であり、まだ生まれて間もない雛鳥同然の妖怪の子は飛ぶことができない。つまり、徒歩で行かなくてはならない。
 すでに樹海を抜け、山の滝壺付近までは辿り着いた。しかし、すでに足は棒のようだ。身体で移動するのは、いつ以来だろう。本当に慣れないことはするものではない。一方の妖怪の子といえば、まだ全然平気らしい。何故……。もしかして、セキレイとかダチョウとかの妖怪なのか。
 で、滝壺で休憩しながら天狗がやってくるのを待っていた。私は水を飲みながら岩に腰掛け、妖怪の子は持ってきた桃(昼食用)をかじっていた。もはやここは、河童と天狗のテリトリーに入っている。何らかのアクションがあるはずだ。
 が、もう小一時間何もなかった。哨戒をさぼっているのか、それとも丁度テリトリーの隙間なのか。はたまた、私の厄が警戒されているのか。このまま待っていても千日手だろうか。流し雛にも周りを探ってもらったが、全く反応がないようだ。
 「いっそ、神社の辺りまで行ってみようかしら」
 最近、新しくできた神社が山の頂上にある。アクションがないなら、こっちから出向いたほうがもう早いだろう。ただ、それを実行するには一つ覚悟が必要だ。
 私自身が厄によって、不幸になることだ。
 流し雛は、妖怪の子の手を引くことはできても持ち上げることはできない。当然ながら滝を歩いて上るルートは無い。そうなれば、私が背負って飛ぶしかない。
 「さて……。」
 私は妖怪の子を呼んで、手を取った。
 山の頂上にある神社への道中は、いたって簡単だ。滝を上るだけ。空を飛べる私だけならば、容易な道中だった。今も、水飛沫を避けるように飛んでいる。
 にも関わらず、すでに服は水をかなり含んで重くなっている。結構滝からは離れているけど、何回も突然の水飛沫に濡らされている。不運だ。
 それが私の不運ならば、仕方がない。巡り巡って私に来た厄なら、甘んじて受けよう。しかし、それが何度も続いているのがおかしい。また、水がはねた。もう数えることも面倒になってきた。
 原因はわかっている。妖怪の子だ。溜めこんだ厄は、私自身を不幸にすることは決してない。が、溜めこんだ厄に直接触れている妖怪の子は別だ。今、この子は幻想郷一の不幸少女。隕石の直撃コースにいてもおかしくない。そして、私はそれに巻き込まれているわけだ。
 途中、流木や氷の塊や妖精までもが降ってきたが、ようやく頂上に着いたときには私・妖怪の子・流し雛の全員が濡鼠になっていた。
 頂上は、一面の湖だった。御柱が何本も点在し、頂上についていながらもさらに見上げることになった。首が痛くなりながら湖に立つ鳥居を何本とくぐり抜け、遠くに見える社殿を目指す。 
 途中には妖精もいたようだが、私たちを見るや否や高速で離れていった。避けられるのもアレだけど、今回に限っては素早く進みたいので幸運だったということにする。そんなこんなで、湖の真ん中に位置した島が見えてきた。
 結構な神社があるその島には、森やら芝やらの緑が多い。原生というよりは、無理やり詰め込んで持ってきましたといった感じ。まるで、箱庭のようだ。私はそこに降りてすぐに妖怪の子を私から引き剥がし(指で服を掴んでいてなかなか離れなかった)、厄を回収。服が乾くまで、ここで暫く休憩を取る事にした。
 さて、ここに来た目的は妖怪の子の親情報の聞き込みだ。
 「もしー」
 戸を叩きながら、呼びかけてみる。返事はない。巫女がいないとしても、神体はいるはず。でも返事がない。寝てるのか?
 直立のまま、何かを待ってみる。巫女が帰ってきても、天狗がやってきても構わない。とりあえず情報が欲しいのだ。
 妖怪の子といえば、流し雛に任せてある。目をやると、茂みに頭を突っ込んで静止していた。
 「……何してるの?」
 野生に帰るのだろうか。
 「かえるさんがいる」
 蛙。まぁ、いてもおかしくはないだろう。そんな珍しいものかと思っていると、妖怪の子が笑顔で近寄ってくる。大変に可愛らしい。特に足が微妙によたよたしているところ。
 「駄目、そこまで」
 私は妖怪の子を、手をあげて三歩前くらいで制止する。
 「約束、ね」
 「……ぅ」
 そう、出発前に約束した。彼女はしっかり覚えていたようだ。安心。ちょっと翼がしょげていて、心が痛い。
「それで、蛙さんは?」
 妖怪の子が笑顔に戻り、私を先導する。妖怪の子はまた茂みに顔を突っ込み、私は少し離れて覗き込む。
 
 そこには、生き物のものとは思えない、無機質な瞳が

 私は咄嗟に妖怪の子を抱きかかえて、後ろに飛びのいた。何か、本能的に危ない気がしたからだ。
 妖怪の子が困惑する中、うごうご動くあの目玉を睨みつける。あれが蛙……冗談じゃない。確実に神格級なんだけどアレ……。
 「あり?」
 なおも激しく動く目玉。妖怪の子はそちらに向かっていこうとするが、私は離す気は無い。なんであんな怪しいモノに、この子を近づけられるというのか。
 眼を合わせること、暫く。
 頭に、衝撃が走った。
 別に、精神攻撃を受けたとかいうわけではない。何か、固いものが頭に落ちてきたのだ。私は思わず膝を付き、その場にうずくまる。
 「だいじょうぶ? だいじょうぶ?」
 妖怪の子が、私を心配して頭を撫でる。大丈夫だと応えるけど、涙が滲む。ゴトリ、と黒い輪が私の前に落ちた。鉄だろうか。
 ああ……絶対コブになってるな……。
 「あ、そんなとこにあった」
 茂みから、目玉の本体が飛び出してきた! まぁ、なんと可愛らしい女の子。いやいや、そうじゃなくて。茂みから飛び出してきたのは化け蛙ではなく、蛙が描かれた服を着た女の子だった。私よりも背が低く、妖怪の子よりも高い。けど、おそらく神格は私よりも上。厳格な格付けもないけど。
 「かえるさんだー」
 服の柄か。そうなのか。
 はっとした私は妖怪の子を、流し雛へ投げ渡す。手渡しくらいの距離だけど。
 そして私は飛び退り、一気に厄を回収する。あの鉄の輪が頭に直撃したのも、私が思わずあの子を抱き上げていたからだろう。不覚。
 そんな私を、鉄の輪を拾いながら蛙の神様は眺めている。
 「面白い動きをするねぇ」
 ニヤニヤと、年配のような声をかけてくる少女。いや、まぁ年上なんだろう。彼女は妖怪の子の頭を撫で、何かを話したあとに私に向き直る。そして、私の中を覗くような瞳を輝かせて私に歩み寄る。
 「あ、それ以上は」
 厄が憑く、と続けることはできなかった。彼女があっさりと厄の中に入り、私の口を人差し指で塞いだからだ。
 「あんたも大変だろうけど、そんな硬い顔じゃあの子も不安になるよ」
 胸を何かで刺された気がした。多分、焼けた鉄のようなものだろう。
 「慣れないことをしてるみたいだけど、早いうちに済ませたほうがいいね。倒れそうな顔色だよ?」
 優しく諭すような声で私に言い、厄が届かないところまで下がった。当然、厄まみれ。なのに、私は回収することを忘れている。それよりも、今の言葉が思考に楔を打っていた。
 わかっている。
 その結果がどうなるか、それは一度経験している。二度繰り返すほど、私は愚かではないつもりだ。
 「あ、あれ? そこまで気にすることないよ?」
 「ああ、大丈夫です」
 厄を私の元に戻し、本来の目的を果たすことにする。
 「この子、親とはぐれた妖怪なんですけど」
 「あ、実の娘じゃないんだ」
 「心当たりありませんか?」
 相手の発言は無視。冗談に付き合える状態では、なくなった。
 「私は本殿から出ないからね。うちの巫女なら知ってるかもしれないけど、今日は天狗の分社にいってるし」
 「……天狗の集落にはどういけば?」
 「それもね、同じ理由でわからない」
 普通、神社のご神体はその住処から出ることはない。私が出歩くのは、あの神社が私の本来の住処ではないから。そういった意味でも、私は普通の神とは違う存在になる。
 天狗に辿り着けないなら、人里に降りたほうが確実だ。
 「情報、どうもありがとうございます」
 陽気のおかげで、服も乾いた。そろそろ発つことにする。助言の通り、手早く済ませてしまうことにしよう。
 「では、これで失礼します」
 「ん、また二人でおいでー」
 二人で頭を下げ、頂上の神社を後にする。小さな神は、暫くこちらに手を振っていた。
 

-・・・ ・・・- -・ ・・・- ・・-・・

 
 また妖怪の子を背負って、空を飛ぶ。
 高度をかなり高く取っていれば、不幸であってもぶつかる物もなく、せいぜい雨か風程度のものだ。その代わり、少しだけ肌寒い。私の横には、流し雛が付いてきている。妖怪の子が落ちないようにという目的と、妖怪の子の目を塞ぐという目的がある。どうせならこの光景は、自ら飛ぶことが出来たときに味わってもらいたい。
 障害も無く、ひたすら速度をあげても平気。人里に辿り着くまで、私はどうするかを考えていた。と言うよりも、結論自体は出ている。問題はそれをこの子にどう伝えるか、ということ。
 高高度の私には、もう人里は見えている。そこから少し離れた、慧音の家も。私は高度と速度を下げ、人里に近付いていく。人が集まる繁華街を避け、一直線に慧音の家に向かう。
 着地は少々荒く、慧音の家の前を少しだけ抉った。妖怪の子が振り落とされないように、流し雛にサポートさせる。
 「な、何事だ!」
 乱暴な着地は結構盛大に音が出た。その音に釣られて、慧音が家の中から飛び出してくる。
 「や」
 片手を上げて挨拶。妖怪の子もそれに準じるが、慧音には状況が飲み込めていないようだ。無理もない。
 「あ、えと、とりあえず家に上がりますか?」
 家に上がらない理由は前に教えたはずだけど、妖怪の子にはそんな理由はない。私は、昨日使った縁側近くの岩に腰掛ける。慧音は縁側へ、妖怪の子は私が慧音のもとに行くように言った。
 「続けて来訪とは珍しいですが、今日はどのような用向きで?」
 妖怪の子を膝の上に乗せながら、慧音が尋ねる。私は妖怪の子を指差しながら、
 「その子、昨日迷って私の家に来たの。親でも親戚でも知り合いでも、何か知っていることはないかしら?」
 と返した。前置きも何もなしに本題。慧音は里に出入りする者なら、人妖を問わず覚えているだろう。
 慧音は眉間に人差し指を当て、眼を閉じて思案する。まぁ、妖怪の子自体を見たことはなくとも、顔とかで親の候補が出るだけでもいい。そこまでわかれば、次の段階に進むことができる。
 「……寺子屋には人間の子しかいないし……酒屋にもいない……宿か?」
 親がわかったとして、どうするか。今日中に辿り着けなかった場合、また家に連れて帰るのか。それだけは避けたい。今日はここまで、大きな災厄はなかった。だけど、今日が終わってもそれが続くとは限らない。そして、山の神社の神ではないが、私も保てなくなってしまう。
 昨日、妖怪の子が家にやってきたときから、私は意識的に厄を絞っている。傍目には変わらないが、いつもは均等な密度であるのに対し、妖怪の子が近付くときは厄の密度に偏りを持たせている。密度の変化によって、不幸の度合いがどうなるかは私にはわからない。私の気休めのようなものかもしれない。
 「……申し訳ありませんが、私の記憶にはありませんね」
 「そう……うーん……」
 結構期待していたのだが、そう都合よくはいかないということか。
 「えーと、里によく来る天狗とかいない? もしくは、紅白巫女でもかまわないわ。できれば、紹介してほしいの」
 粘ってみる。
 「ああ、射命丸なら夜雀の屋台に最近よく来ているようで」
 「それだ!」
 思わず、声を上げてしまった。慧音は眼を見開いて、妖怪の子は反応なし。いつの間にか慧音からもらった菓子にご執心の様子。
 「こ、紅白巫女も時々顔を見せるみたいだから、屋台が開いたら行ってみればいいのでは」
 慧音、引き気味。そんなに、私の反応はアレだったか……。
 「で、それはどこに?」
 というか、夜雀の屋台すらも初耳。
 相変わらず、人里の事情には疎い私。
 「夜に、里外れに出現します。よろしければ、ご案内しますか?」
 「よろしくお願いしたい」
 思わぬ幸運。
 「ついでに、一つお願いしたいんだけど」
 「何でしょうか?」
 私は慧音に近付き、耳打ちする。
 「この子を、里の子と遊ばせてやってくれないかしら?」
 「それは構いませんが、一緒にいなくて大丈夫ですか?」
 「大して構って上げられる体質じゃないから、発散させてあげたいのよ。目付け役で流し雛もつけるし」
 「厄神殿はどこへ?」
 「ちょっと、散歩にね」
 「そうですか。その程度だったら請け負いますよ」
 「じゃ、お願いね」
 言うなり、私は飛び上がる。妖怪の子が慌てて付いてこようとするけど、翼はパタパタと動くだけで体は浮かび上がらない。慧音がその様子を見て、私を呼び止めようとするが無視。
 「ちょっと出かけてくるからー!慧音のところで大人しくしてるのよー!」
 大きく手を振ると、ぴょんぴょん跳ねながら返す妖怪の子。
 振り返って逃げるように飛び、そのまま適当な森に入る。私の住処よりも、風が通る清らかな森。できるだけ、奥へ進む。慧音と共に追ってきても、見つからないくらいに奥へ。
 手ごろな樹に、もたれかかるように跪く。肩で息をするほど、無理をして飛んだ。ざらざらした樹皮に、額をこすりつける。樹皮が手に食い込むほど、強く樹を握る。
 嗚咽とはいえないまでも、泥のような息が口から漏れる。あの子のことだけではなく、夢にまでみた紅い光景が脳裏に広がる。
 やっぱり私が、誰かと寄り添うことは無理なのだ。
 全身から力を抜きながら、再確認。
 「あは……」
 乾いた笑いが漏れる。泣きたい気分なのに、どうして笑いになるんだろう。体を回して、樹に背中を預ける。木漏れ日が眩しい。
 今夜、あの子の親が見つかったらやること。それは決まっている。でも、今でさえこんな調子なのに成すことはできるのだろうか。
 葉の間を見上げれば、蒼を透かす雲が流れている。あの子も、いずれはあそこを飛ぶのだろう。
 それを思いついてしまって、手で顔を覆う。だめだ、また意志を曲げてしまいそうになっている。時間の流れが遅い。これなら、いっそ止まってしまえばいいのに。そうすれば、もう顔をあわせなることもないままに別れることができる。
 (慧音には、叱られるだろうな)
 手を空にかざしてみる。指の間から見える空を、大きな鳥の影が通り過ぎていった。


--・・-  ・・- ・ ・-・-・ 

 
 提灯の灯りは、月と違って暖かい。私の目の前にあるお猪口の酒が、橙色に揺らめく。正面には、ミスティアという店主が騒がしく八目鰻を焼いている。右には妖怪の子、その隣には慧音。流し雛は、すでに樹海へ帰した。私自身は、厄を出来る限り小さく保っている。こんなところで、厄をうつしていくわけにもいかないから。
 屋台への道中にて、私は慧音から説教を受けていた。もちろん、妖怪の子には気付かれないように。
 「厄神殿、どこへ行ってきたのですか?」
 「ちょっとね」
 「あの後、里に連れて行こうと思ったのです。でも、ここで待ってると聞かなくて」
 「へぇ」
 「子どもは、親に構って欲しいものなのです。散歩程度なら一緒に連れていっても……」
 ずっと、小言は続いた。慧音に悪気はないのだろうけど、それはもう無理な相談だ。
 それを言ってしまうと、追求されてしまうから黙っておく。
 親鳥が見つかれば、それで別れなのだから。
 
 
 そんなわけで、屋台の席では多少尖った空気になっている。他の客もいないし、店主は歌い、妖怪の子は鰻にご執心。険悪なのは二人だけだった。厄があるため、離れたところに腰を落ち着けたかったけれど、
 「そんなの気にする店主でも、客でもない」
 と押し切られてしまった。
 それも、件の天狗が来れば終わる。それまでは八目鰻を食べ、酒を楽しむことにしよう。
 おいしい。
 
 それから、もう少し夜が更けて月が高く昇った頃。ようやく、待ちわびていた天狗がやってきた。 
 「ありゃ? 珍しい人がいますねぇ」
 闇から現れた天狗は、そよ風を引き連れて現れた。何かを企むような笑み、やたら露出度の高い脚。結構な胡散臭さだ。
 「おや、文さんじゃないですか~」
 「とりあえず熱いの一本くださいなー」
 「はいよ~」
 常連のようだ。右から詰めて座っているため、天狗(文といったか)は私の左へ。彼女も、厄を気にすることはない。
 「さて、取材でも始めましょうかね」
 文は分厚く、年季が入った手帳を取り出して私に向き直った。
 「さて、妖怪の山の麓に住む神様と察しますが」
 おお、私のことを知っているのか。
 「とりあえず、愛を寄せる方なんぞ」
 喧嘩を売っているのか?
 「冗談ですよ」
 険悪な空気と共に、取材は進行。途中、何度か文の筆から墨が出なくなったり、炭が爆ぜて店主が軽い火傷をしたりしながらも順調に終了した。
 「やー、いい記事が書けそうです」
 ほくほく顔の文。
 「じゃあ取材のお礼として、一つ尋ねたいことがあるのだけれど」
 「記事のこと以外なら、何でもお答えしますよ」
 私は気付かれないように、妖怪の子を示す。当人は店主と話をしている。同じ鳥の妖怪だからか、相性はすこぶる良いようだ。
 「あの子、昨日の晩に親とはぐれたのよ。あの子の親について、何か情報は無いかしら?」
 「ふむ、それはちょっと聞き覚えがあるような」
 文は手帖を開き、目にも留まらぬスピードで読み始める。文の小さく揺れる前髪が、手帖が起こす風圧を物語る。物語っても、微々たるものは微々たるものに過ぎないのだけど。
 「あーえっと、ありました」
 「本当に?」
 「ええ、ネタ自体は私のものじゃないので聞きかじりですけど」
 「どれどれ」
 「あ、駄目です。飯のタネは見せられませんよ」
 文曰く、迷子の情報は昨日から今日の間。偶然、その母親に遭遇した鴉天狗が情報を得、その鴉天狗から発信された情報が文に回ってきたらしい。文は直接関わっていないために、直に連絡はつけられないけど、その天狗に取り次ぐことはできるそうだ。
 「お急ぎならば、今からでも連絡はつけられますよ? 無償ではないですけどね」
 できることなら、早いほうがいい。
 「お願いするわ」
 「では報酬は、もっと濃密な取材ということで」
 「濃密……?」
 「じっくり耐久丸一日です」
 「うぇ」
 では、と残して天狗は眼に留まることもない速度で夜空へ飛び出した。遅れて、妖怪の山の方角がざわめいた。もはや影も見えないが、私は立ち上がってそれを見送る。
 「からすのおねーちゃん、かえっちゃったの?」
 「うーん、特ダネでも見つけたのかな?」
 背中に暢気な声が届く。
 特ダネと言えるかはわからないけど、提供したのは私だ。明日には、『親子の感動の再会!』なんて見出しの新聞が配られることだろう。
 さて、これで目的は果たされた。
 
 「あなたのお母さん、見つかったそうよ」
 妖怪の子の後ろに立って、店主との会話に割り込む。驚異的な速度で振り返る妖怪の子。それはそうだろう、最も興味を引く話題なのだから。
 「ほう、よかったじゃないか」
 ずっと聞いていたであろう慧音の、白々しい反応。祝っているのは嘘ではない。ただ、演技が下手なんだ。
 「どこにお母さんかお父さんがいるのか気になるだろうけど、天狗にお願いしたから待っててね」
 「あ、あう。もぐもぐ」
 よく見ると、まだ一匹も平らげていない。まだ食べることに慣れていないようだ。店主と慧音は、それを微笑みを以って眺めている。この子も、心配事は無くなっただろう。
 さて、私の役目は終わりだ。
 
 「じゃあ、私とは此処でお別れね」

 妖怪の子から、表情が抜け落ちた。
 元々、ここまで一緒に居る気は無かった。滝でも思ったことだ。一緒に居れば居るだけ、この子の命が危うくなる。
 言葉にならないまま、妖怪の子は私の手を握った。爪が刺さるかと思うほど力強く、どんなことがあっても離さないという意志がある。
 こんなに手を強く握られたことがあったか、記憶にはない。これは嬉しいことなのだろう。
 けど、これではいけない。
 「駄目よ」
 私は、拒絶する。凍てついた鉄のように、誰にも触れられないように容赦なく。
 それでも、手は離さない。瞳が、何故そんな事を言うのかと問いかける。焦燥とも苛立ちともつかない感情が、内に沸きはじめた。
 「いい加減にしなさい……!」
 自分では、感情を抑えていたつもりだった。けど、慧音や店主までもが反応するほどに判りやすいものだったようだ。
 「厄神殿、その言い方はいくらなんでも」
 「あなたは黙ってて」
 妖怪の子に向き直れば、もう決壊する一歩手前だった。握っていた手を離し、今は胸のあたりで抱いている。泪が流れていなくとも呼吸は嗚咽のソレ。大泣きすることはないだろうけど、今は大泣きされたほうが気が楽だと思う。
 親と再会できるのに、自分のかえりみちに戻れるのに。なんで、そんな顔をする?
 「もう二度と、私と樹海に近付いちゃ駄目よ」
 告げるべきことは告げた。妖怪の子は慧音にも懐いているようだったから、慧音のところでも大丈夫だろう。慧音も妖怪の子を捨て置く真似はしない。
 安心して、戻ることができる。
 「厄神殿」
 慧音の声を無視して、私は振り返る。店主がオロオロしているのが見えたが、フォローのしようもする気も無い。申し訳ないが、捨て置かせてもらう。
 「逃げるのか、厄神殿」
 そう、逃げるのだ。私には、厄を溜め込むことはできても命を背負うことはできない。屋台からゆっくりと歩いて去る。慧音が追いかけてくる様子もないけど、小さく押し殺された泣き声が聞こえた。
 それから少し森の中を進んで屋台の灯りも見えず、妖怪の子の姿も捉えられなくなった頃。私は、葉の屋根が薄いところから空へ上がる。月も星も見えないほどの黒雲が、天を覆っていた。
 また、雨が降るのかもしれない。そんな予感はしたけど、私は家路を急ぐ気にはなれなかった。上も下も暗闇の中、その雫に打たれれば、少しはこの気持ちが流されるかもしれない、などと考えたから。


 その後、どうやって家に辿り着いたのかは覚えていない。体がやけに重い。体を見れば、全身が濡れ鼠。ここで初めて、雨が降っていたことを知った。
 あの子は、慧音が面倒を見てくれるだろう。もしかしたら、天狗の速度次第では今日中にでも再会できるかもしれない。少なくとも、私と一緒にいるよりは安全だろう。心配することは何もない。
 いつもと同じ、誰にも知られぬ秘神に戻るだけだ。
 ……濡れた髪が気持ち悪い。
 さっさと着替えて寝てしまおう。今日は疲れた。灯りもつけず、適当に布団を敷いて横になる。
 意識が落ちる直前に浮かんだのは、最後に見た泣き顔だった。
 私は何を後悔しているのだろうか……。


・-- ・・・- ・・-・・ --・・- ・-・


 目覚めは陰鬱、ずいぶんと眠っていたはずなのに、全く寝た気がしない。多分、顔はひどいことになっているだろう。
 そして、自然に目覚めていないことも原因の一つだろう。社殿の戸が、ずっと叩かれている。それも、かなり荒っぽく。もう踏み込んで来そうな勢いだ。そんな相手を出迎える気は無いが、
 「私だ、厄神殿!」
 声の相手がアイツでは、出ないわけにはいかない。とりあえず、身嗜みだけ整えて迎え入れることにする。少なくとも説教、行って修羅場が待っている。
 「はい」
 戸を開けると、予想通りの形相で慧音が待っていた。
 「先に言っておく、すまない」
 竹が爆ぜるような音を立て、私の頬が叩かれた。もちろん、頬を叩かれる程度のことは予想していたけど、あまりにも唐突で体が固まった。頬にじわじわと、痛みがやってくる。
 「子どもを置き去りにするなんて、何を考えていた」
 呆然とする私の胸倉を掴み上げ、静かな声で私に問う。
 「あの子は確かに妖怪で、数日くらい放っておいても死ぬことはない。でも、あの子はあなたを慕っていたんだ。あの後、あの子がどんなに悲しんだのかわかっているのか!」
 そんなことはわかっている。
 「何故、置き去りにした!」
 慧音は優しい。見ず知らずの妖怪の子どものことで、ここまで真剣になれるのだから。
 でも、私はあなたとは違う。
 「……それはあなたの理屈でしょう」 
 自分でも、驚くほど冷めた声だった。
 「あなたに、私の何がわかるっていうのよ」
 私の周囲では、皆が不幸になる。例外なんか存在しない。私にどんな感情を持っていようとも、どんな幸運の護符を持っていようとも関係はない。そして、その不幸は死に至るモノだ。
 「できるなら、あの子を見送ることだってしたかった。でも、そのためにあの子を殺せっていうの?」
 厄は、元来私が持っているものではない。言いようによっては、私に非は無いと言えなくもないだろう。
 しかし、私は厄神。不幸を溜め込んで、それを戻さないことが役割。自分が仲良くしたいからと、役割を放棄することはできない。だから私は、あの子を突き放した。
 もしかしたら、友達になれたのかもしれなかった。
 「そんなに泪を流してまで、果たさなくてはいけないものか?」
 私は初めて、顔を流れる雫に気が付いた。その理由は、自身が一番よく知っている。
 「神が自分の役割を果たせなくて、どうするのよ。厄を管理する私が、厄をばら撒くなんて冗談にもならないわ」
 神は、人間や妖怪よりも理に近いところにいる。だから、自身をより律しなくてはならない。
 だから、二度と寄り付かないようにあんな真似をした。
 「……あの子や私は、何故厄を気にせず、あなたに近付いたと思いますか?」
 妖怪の子も天狗も、厄の危うさは本能で気付けるはずだ。言われてみれば、何故だろう。
 「……全く、あなたは人と接することにおいては雛鳥と全く変わりませんね」
 慧音は呆れたような顔をして、私から手を離す。ピリピリした雰囲気も、鳴りを潜めた。
 「いいですか? 厄がどうのこうのよりも、あなたが好きだからですよ。そうでなければ、最初からあなたに寄り付いたりしない」
 私が好き?
 何の酔狂だろう、それは。
 「あなただって、あの子が好きだったのでしょう?」
 それを言われると、なんとも。
 「まぁ、それはそうなんだけど」
 「……あなたも頑固な方だ」
 再度呆れる慧音。だって、もうどこにいるかもわからないのにどう謝ればいいのやら。
 悩む私を置いたまま、慧音は背後の樹海を気にする。
 「今朝です」
 「え?」
 「あの子が親と会えた時ですよ」
 どうやら、天狗の足でも無理だったようだ。親鳥を誘導しながらだろうから、仕方がないことだろうけど。
 「そして、あなたにお礼を言いたいそうです」
 「……あんな仕打ちの後に、どう会えっていうのよ」
 「それはあなた次第です」
 慧音は、私の懊悩も気にせずに背後へ手招きをする。 
 案の定現れたのは、妖怪の子とその母鳥らしき妖怪。立派な灰色な翼を持っているけど、それでいて柔和な印象を持たせる方だ。
 その後ろに隠れるようにして、妖怪の子がいる。昨日の今日で、まともに会えというのが無理な話だ。そして多分、被害者よりも加害者のほうが重圧を感じている。
 母と慧音に促され、妖怪の子は私に歩み寄ってくる。先の話を聞かれていた手前、妙に気恥ずかしい。
 そして妖怪の子は、私の腿を抱えるようにして抱きついた。
 困惑。こんなときにどうすればいいのか、私はわからない。
 「もう厄まみれですから、引き剥がしても無駄ですよ」
 慧音から、助けなのか泥なのかわからない舟が出された。乗るかどうかを決めるのは、私自身ということらしい。妖怪の子に腿を抱かれて身動きが取れないまま、私は少しだけ悩んだ。
 妖怪の子を、足から剥がす。慧音はそれを見て、少しだけ表情を硬くした。私はすぐに両膝をついて、妖怪の子と同じ目線に。そして、自分でもぎこちないとわかっている笑みを作る。
 「ごめんね」
 今度は私から、しっかりと抱きしめた。謝罪と、仲直りと、これからもよろしくと。全部を一つ一つ言うのは恥ずかしいから、この抱擁に込める。
 妖怪の子は、柔らかい匂いがした。

 それから程なくして、妖怪の子は母親と一緒に帰っていった。今度来るときは、迷子ではなく自分から来れるようになってからと約束して。
 「で、次はいつ里に来られますか?」
 「……なんでそうなるのよ」
 「友人を一人紹介しようと思いまして」
 あんなことの後で、すぐそういうことをするか。もちろん私のためなんだろうけど、結構胃が痛い思いをしたのだ。少し休ませてほしい。
 「心配せずとも、あいつは死にませんから」
 「……何の比喩?」
 「いいえ、事実そのままです」
 それは、友「人」なのだろうか。まさか、異形のモノではないと思うけど。
 「正体は、会う時までに考えておいてください。私からの宿題です」
 そう残して、慧音も帰っていった。私は、アンタの寺子屋の生徒ではないと背中に返事を返す。
 そして、期を見計らって流し雛たちが出てくる。軒下から、その辺の茂みから、屋根の上から。私を心配していたのだろうけど、それならもっと早くに出てきてほしい。
 まぁ、いいか。
 ここ数日、類を見ないほどに密度が濃い時間が続いた。
 嗚呼、よくもこんなに引っ掻き回してくれたものだ。神の中でもとりわけだというのに、畏れもしない。
 でも今は、それが心地良い。
 だからこんな気まぐれが起きたのも、彼女たちのおかげなのだと思う。


 「今日は、どこに厄集めに行こうかしら」
 

 (了)

2010.08.25 | | Comments(0) | Trackback(0) | SS

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