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厄神様の冒険



夏コミ公開SS本
『厄神様の冒険』


 樹海の入り口に、珍しいものが落ちている。
銀色で、バールような形をしたいかにも重厚な感じを漂わせる管。そして、それからはツンとする芳香が漂っている。
 つまりは、煙管だった。
 誰が置いたか捨てたか、煙管には未だ燻る煙草が詰められている。いかに湿度がある樹海とはいえ、燃え移れば瞬く間に大火事になる。大鐘楼の家事など、塵芥に過ぎないほどの灼熱になる。
 そして、樹海に連なる妖怪の山や、人里近くの林に至れば未曾有の惨事となる。異変どころの話ではない。犯人は、賢者につるし上げられたあと、阿鼻地獄に落とされることとなろう。

「……何かしら、これ」

 そして、それを見つけたのは樹海に住む厄神だった。足元には、様々な形状の流し雛。煙管に興味を示したのか、怯えながらも取り囲んでいる。中には、紙でできた者もあるために近付けやしないのだが。
 雛は、煙管を拾い上げる。未だ、煙を上げ続けるソレの用途を知らないのか不思議な視線を投げかける。同様に、流し雛も長に倣い首をかしげる。

「誰の落し物かしら?」

 現実には、あり得ないことを呟く。樹海は、妖怪の山と里を隔てる一種の境界線。人間はおろか、低級妖怪も容易に奥地へとたどり着くことはできない。厄神の通り道へと、たどり着くことができる種族は限られる。能力を活用できる人間と、妖怪の山に住む厄介者。そして、樹海を無視できるほどの大妖怪。

「後は、その辺にいる八百万のお仲間か。もしくは、これに憑いている、付喪神かしら? もしもーし」

 返事はない。当然である。
 草は燻り、臭いも弱くなる。灰になった草を、湿気った地面に落とす。程なくして、火の気が完全無くなったことを確認する。これで、雛の新たなスペルカードが生まれることは無くなった。

「さて、どうしましょうか」

 雛の懸念は、もちろん煙管である。基本的に、お節介焼きなのだ。銘菓ではない。落としたなら、届けなくてはという思考が働く。神であるはずなのに、人間くさい思考である。否、人間であればここまで面倒なことに首を突っ込むことはない。
 人側の、それも俗世に近い神故か。それとも、自身も流し雛であったが故か。とにかく、雛は

「持ち主を探さなくちゃ」

という思考に至ったのである。
 しかし、雛には心当たりはない。樹海から出ることすら少ない彼女には、、訪ねる先も限られている。
今ここに、厄神様の壮大でもない普通の冒険が始まった!







壱 妖怪の山

 樹海と最も近しい場所と言えば、此処。妖怪の山である。山の妖怪は、ほとんど雛の事を知っている。樹海以外で、最も雛の認知度が高い場所だ。次いで人里になる。
で、妖怪の山の渉外役と言えば、

「で、今日はどんな御用向きですかぁ?」

 射命丸文である。渉外役及び厄介事担当とも言い、今回にはぴったりな役柄だ。当人は、せっかくの昼寝を邪魔されたためにご機嫌斜めである。
しかし、雛はそんなことに構いやしない。

「この管の持ち主を、ご存知ない?」

 半目でにらむ文に対して、まるで抜刀のように煙管を突きつける雛。勢い余り、鼻柱を叩き折った。声も無く、悶絶する文。服が汚れることにも構わず、不思議な動きで地面を這い回った末、岩に引っかかり河に落ちた。
 まさに厄。
 雛は、下手に助けると厄が移るために離れて見守っている。にこやかな笑顔で悶える天狗を眺める神の図は、端から見れば異様の一言。
 どこの特殊な趣味だ。どの新聞の読者も求めない。どこぞの、そんな趣味の妖怪ぐらいだろう。
文が河に落ちて、這い上がって来るまで十分ほど。多少流された後、羽が濡れて飛べなくなったので歩いてきたとのこと。

「……で、何の話でしたっけ。ゆっくり見せてください」
「これです」

 今度は、警戒しながら受け取る文。もちろん、雛は事前に厄祓い済みであり、付喪神が憑いていないことを確認している。

「ふーん……年代物の煙管ですね」
「その辺りは、よくわからないわ。趣味人の世界ね」
「無知と興味なしは、天と地ほどの差が……なんですか、その絶望に満ちた顔は」

 初めて言われると、割と傷つく言葉である。交際関係の少ない雛からすれば、結構な衝撃であった。

「ああ! 冗談、今のなしです! 泣かないで! 泣かれますと、主に私の首が危ない!」

 厄という倦厭されるものを集める厄神様の味方は、人知れず多かったりする。遭遇することも希少なため、特に里の人間からは結構な信仰心を集めているとか。
 雛を宥めるのに、用いた時間。プライスレス。オフバランスかもしれない。

「と、ともかく。この煙管は、我々の誰かよりも旧い物です。この煙管の作り方は、今じゃ行われていないのですよ。天魔様か、鬼くらい旧い方じゃないとまず持ってないです。後は、奇特な物持ちが良い人間くらいしか」
「ぐすっ。わかったわ。また今度ね。遠くから見てた、天狗さんにもよろしくね」

 不穏な一言を残し、山を去る厄神様。
 直後、鶏をしめたような切ない絶叫が山に響き渡ったとか。







弐 里

「……厄神殿、ここは託児所でも落し物が届く役場でもないのだが」
「まさか、私が落し物になるなんて思っても見なかったわ。不思議ね」
「失礼だが。腕が取れて気付かないなんて、ちょっと暢気すぎじゃないか?」
「えっ。腕って時々取れるものじゃないの?」
「えっ」

 現実に交わされた会話である。一切の脚色は、用いていない。全て現実である。
 その後も、上白沢慧音は全く息が合わなかったため、とある場所に案内した。決して、体良く押し付けようと思った訳ではない。

「本当かな?」
「嘘偽りは、ない。」
「ま、隠し事は君の得意とするところか」
「?」

 香霖堂である。実用物は特になく、店主の趣味の品揃え。そして、売るかどうかは気分次第という、店かどうかも疑わしい店である。
 当然雛は初来店であり、そんな事など知る由もない。

「ふむ……曰くもなし、本当に単なる煙管だね。年代物ということには、間違いないけれど。よく現存していたものだ。」
「森近殿は、持ち主の特定はできないのか?」
「さすがに無理だよ。僕は、使い方しかわからない」
「あのー」

 おずおずと、雛が手を上げた。

「煙管って、なんですか?」
「「……」」
 
 なんともいえない空気が、店内を覆った。二人は、そんなことを想定していなかった。当たり前だ。自分より長寿であるはずの神が、その物が何かもわからず持ち主を探すと誰が思うだろうか。雛も、良くも悪くも関りが少なすぎるのである。知識が無いと言われても、文句は言えないのであった。
 半獣授業中。
 厄神聴講中。

「へー、草をねえ」
「わかってないな、多分」
「まぁ、今回重要なのはそこじゃないだろうからね」

 全く、進展はない。
 むしろ、厄神の森に落ちていた物の持ち主を探すということ自体が無謀であったのかもしれない。雛も薄々、それを感じてはいたようだ。

「じゃあ、これは厄神様に供えられていたのではないか?」
「私に?」
「意図もわからず、火を点けたままだろう? わざと置いていったとしか、私には思えないのだ」
「うーむ」

 腕を組んで、悩む雛。本当にそうなのであれば、返すのはむしろ無礼というものだ。『お前の供え物なんかいらねーよ!』ということになる。傍若無人すぎる。

「……ふと思ったけどさ」
「何か?」
「寺子屋の先生が、歴史を見て持ち主を探すことはできないのかい? 名は知らなくとも、顔くらいはわかると思うけれど」
「あ」
「?」




 試した結果、即持ち主は判明した。







参 博麗神社

「あらー。樹海で落としてたのね。届けてくれて、どうもありがとう」
「いえいえ」

 結論から言えば、持ち主は八雲紫だった。慧音によって、持ち主が判明した後に雛が張り込んでいたのだ。厄が移らぬようにと、微妙な距離を取る雛を霊夢が鬱陶しく思ったのは言うまでもない。
 何せ、日々厄取りのために鳥居や縁側の下から笑顔で監視されているのだ。いい気分ではない。その苦労を鑑みれば、霊夢はこの日をどんなに待ち望んでいたことか。

「多分、上空を通過中に居眠りして落としたのね」
「その時に、厄でも憑いたのかしら?」
「かもしれないわね。でも、戻ってきたから良しとするわ」

 なら、何故落とす。霊夢は縁側の逆端で呟いた。

「私も、ここ数日は樹海の外に出れて楽しかったわ。腕が取れたり、濡れたりもしたけれど」
「何があったのか、非常に興味があるわ」

 雛は、歯に衣着せる事をしない。それは、神故にの……否、性格だろう。神であるはずなのに、純粋すぎて妖精に近い。数日間に出会った人間、妖怪、そしてその行動。全てを包み隠さず、詳細に話した。特に入念に観察した、霊夢の行動には紫も大いに興味を示した。
 
「それでね、霊夢は風呂に入る時にね」
「ふんふんふん」
「ある癖……が……」

 雛は、見た。
 紫の肩越しに、鬼の如き形相の霊夢が弾幕を展開し始めていた光景を。それは、紅白に輝く弾の群れ。

「あんた達、プライバシーというものを学びましょうか」

 文々。新聞 朝刊
 本日未明、博麗神社境内にて大規模な爆発を確認。跡地には、八雲紫と鍵山雛と思われる黒こげの人影が確認された。詳細は、追って報告する。


残念!
厄神様の冒険は、ここで終わってしまった!

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

2009.08.30 | | Comments(0) | Trackback(0) | SS

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